創業融資の基礎知識

創業計画書の書き方と項目別の記入例|審査に通る作成方法を徹底解説

創業計画書の書き方と項目別の記入例|審査に通る作成方法を徹底解説

創業計画書とは、これから事業を始める方が事業の概要・資金計画・収支見通しをまとめる書類で、日本政策金融公庫の創業融資や信用保証協会の制度融資を申し込む際に提出が求められます。

審査担当者は記入内容から事業の実現性や返済能力を判断するため、項目ごとに具体的かつ根拠のある記述が必要です。創業者本人の経験・取扱商品の独自性・資金計画の妥当性・売上根拠の信頼性が、審査通過の大きなポイントとなります。

本記事では8つの記入項目別の書き方のコツと記入例、テンプレートの入手先、最新の融資制度(2024年4月の制度改編後)について解説します。

目次

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創業計画書とは

創業計画書とは、これから起業して新たにビジネスを始める方が、事業の概略・経営方針・資金計画・事業の見通しをまとめた書類です。事業の強み・弱みや見通しを客観的に見つめ直す機会にもなります。

主な提出先は日本政策金融公庫(以下「公庫」)の創業融資、または地方自治体のあっせんを受けた民間金融機関が信用保証協会の保証により行う制度融資で、創業の概要を金融機関に説明する目的で作成されます。

なお、公庫の融資制度は2024年4月に大幅に改編され、これまでの「新創業融資制度」「中小企業経営力強化資金」「女性、若者/シニア起業家支援資金」などは「新規開業・スタートアップ支援資金」に統合されました。創業計画書の役割や書き方は制度改編後も変わりませんが、申込先の制度名は最新のものを確認してください。

創業計画書のテンプレートはどこで入手できる?

公庫であれば各支店に備え付けてあるほか、公庫の公式サイトからもダウンロード可能です。

制度融資の場合は、都道府県や市町村の商工課(自治体により名称は異なります)、各信用保証協会で入手できます。
公庫のテンプレートは業種別にも用意されており、自社の業種に近い様式を使うと記入の参考になります。

創業計画書の項目別の書き方と記入例

創業計画書には次の8項目を記入します。それぞれの書き方のコツと記入例を順に解説します。

創業計画書の記入項目

  • 創業の動機
  • 経営者の略歴等
  • 取扱商品・サービス
  • 取引先・取引関係等
  • 従業員
  • お借入れの状況
  • 必要な資金と調達方法
  • 事業の見通し

創業の動機

創業の想いを「自分なりの言葉」で書きましょう。記入欄が狭いため別紙にまとめる方法もあります。どこにでもある定型表現は他者からの受け売りと感じられ、安易な創業との印象を与えるためです。

ただし、創業の想いを熱く伝えたいからといって「人類の進化や発展に役立ちたい」「日本の消費者に安らぎを与えたい」など事業との関連性が薄い飛躍した表現にとどまるのは避けましょう。最終的には創業する事業と具体的に関連づけることが大事です。

<記入例>

これまでの日本料理店での勤務経験を生かし、かねてより自分の店を持ちたいと思っていました。勤務先の承諾を得たところ、ちょうどいい物件を見つけることができたので開業を決意しました。

経営者の略歴等

この項目では次の3点が問われます。

  • 創業する事業と関係する経験
  • 過去の事業運営経験
  • 事業に関連する資格や特許の有無

事業に関係のある経験や資格があれば業界知識や動向にも詳しいと判断され、関連する特許などがあればセールスポイントにもつながります。

事業に関係する経験・資格・特許を積極的かつ具体的に記載しましょう。直接関係する経験がなければ、少しでも関連する経験を見つけて記載します。たとえば未経験の業界でも、法人相手の販売で創業するなら勤務時代の法人営業経験を記述できます。

過去の事業経験は正直に記載することが重要です。記入の有無にかかわらず担当者は個人信用情報や社内情報を調査するため、事実と異なる内容を記載すると経歴に疑念を持たれ、創業計画全体の信頼性を損ねます。

<記入例>

  • ○○年3月 ○○大学経営学部卒
  • ○○年4月〜 (株)○○広告(広告代理店)5年勤務
  • ○○年7月〜 ○○エージェンシー(広告代理店)3年勤務(広告受注から実施まで担当、部下7人のマネジメント経験あり)
  • ○○年9月 同社退社、士業に特化した広告代理店創業予定

取扱商品・サービス

取り扱う商品やサービスが具体的かどうか、そして同業他社との違いは何かが問われます。セールスポイントは創業計画書のなかでも担当者が特に重視する項目で、他社との差別化は創業後の事業の将来性を占う大きな判断材料です。

記入欄が狭いため、別紙にわかりやすく記載する方法も有効です。取扱商品やサービスは商品設計・販売経路を含め可能な限り具体的に記載しましょう。

セールスポイントは、既存業界では自社の独自性を、新規事業ではその新規性をわかりやすく記載します。たとえば飲食店なら「素材の良さを楽しめる料理を提供する」と抽象的に書くより、「店主の故郷から独自ルートで迅速に仕入れた食材をメインに扱い、配送方法による新鮮さと希少な品目を前面に打ち出した料理を提供」と書くほうがセールスポイントは明確です。

ただし専門用語の多用は独りよがりな印象を与えます。担当者は融資の専門家であって創業する事業の専門家ではないため、相手に合わせてわかりやすく説明することも事業者に必要なスキルです。

<記入例>

  • 取扱商品・サービスの内容:一品料理、コース料理(単品500円前後、コース料理 昼2,000円前後、夜5,000円前後)
  • セールスポイント:店主が海外旅行でスペインの飲食店で長期アルバイトした際に習得したスペインの家庭料理を提供する。同業他社が出店予定地域に存在せず、希少性が見込める
  • 販売ターゲット・販売戦略:近隣に勤める会社員(特に食にこだわる女性客)をターゲットに定め、インスタ映えする盛り付けで口コミやSNS拡散を狙う。来店客に次回飲み物1杯サービス券を渡しリピーター確保へ
  • 競合・市場など企業を取り巻く状況:出店予定地には飲食店が乱立し競合は多いが、それだけニーズも見込める地域。独自のメニューやイベントで差別化を図り、成業は十分見込める

取引先・取引関係等

予定している取引先や取引条件がすでに決まっているかを確認する項目です。仕入先や販売先が決まっていれば、創業にあたって念入りな計画や準備をしてきたと判断されます。

創業融資申込前にできるだけ具体的に記載できるよう準備しましょう。一般顧客を想定している場合でも、年齢層や属性などターゲットを明確に記載してください。明確なターゲットとセールスポイントが関連していれば、事業計画の説得力が増します。

<記入例>

  • 販売先:○○工作所(株)(金型製造業:元勤務先)、シェア60%、掛割合100%、末日〆翌月末回収
  • 販売先:(株)○○機械(成形機械製造業:元勤務先の仕入先)、シェア20%、掛割合100%、末日〆翌月末回収
  • 仕入先:○○部品(株)(部品販売業:元勤務先の仕入先)、シェア80%、掛割合100%、末日〆翌月末支払

従業員

雇用の創出があるかが問われます。融資判断の主軸ではありませんが、開業後1人以上を雇用する場合は特別利率が適用されるケースがあるため、正社員・パート・アルバイト問わず雇用予定があれば記載しましょう。

<記入例>

常勤役員 1名、従業員数 1名(うち家族従業員 1名)

お借入れの状況

創業者個人の借入状況(事業資金部分を除く)が問われます。個人の固定支出が少なければ、事業からの収入を当てにする額が小さくて済むためです。

公庫へ申し込む際に個人信用情報の利用に同意を求められ、同意すれば公庫は全銀協・CIC・JICCなどの個人信用情報登録機関に信用情報を照会します。把握される情報は次のとおりです。

  • 住宅ローン・自動車ローン・クレジット契約の有無
  • 残高
  • 返済状況

把握される項目は多岐にわたるため、正直に記載しましょう。

記入例

借入先種類残高年間返済額
○○銀行○○支店住宅ローン2,560万円120万円
○○信販自動車ローン157万円48万円

必要な資金と調達方法

創業計画における資金計画(必要な資金と使い道の内訳、調達方法と内訳)が問われる、創業計画書の最重要項目です。特に自己資金の有無と金額、創業計画全体での割合は融資判断に大きく影響します。

設備等を購入する場合は見積りを取り、店舗や事業所を賃借する場合は物件の概要がわかるものを入手して具体的な金額を記載しましょう。事業開始後、売上が発生して資金が回収できるまでの運転資金についても、仕入予想額や諸経費の根拠を明らかにします。

自己資金はできるだけ多いほうが望ましく、客観的に証明できるものに限られます。タンス預金など客観性のない資金は自己資金として認められません。

自己資金の水増し(いわゆる「見せ金」)は絶対にしてはいけません。公庫は自己資金の出どころや蓄積過程を非常に注意深く確認し、相当なノウハウを蓄積しています。見せ金の発覚は融資判断に極めて大きな悪影響を及ぼすため、避けるべきです。

<記入例>

区分内訳金額
設備資金事務所保証金200万円
設備資金パソコン等周辺機器一式(見積○○社)120万円
運転資金商品仕入・経費支払資金150万円
必要資金合計470万円
自己資金普通預金100万円
借入日本政策金融公庫(元金5万円×74回)370万円
調達合計470万円

事業の見通し

創業当初と軌道に乗った後で、事業の収支がどのように推移して利益が確保されるかと、その根拠が問われます。事業者がどの程度数値を把握しているかという管理能力も評価対象です。

できるだけ客観的な根拠に基づき記載しましょう。飲食店なら「席数×単価×回転数×月間営業日数」の算式や、同業他社の平均値など根拠が明らかな数値を引用するのが望ましい記載例となります。

個人的な経験や推測を根拠にした記載は楽観的なケースが多く、融資判断上あまり良い印象を与えません。予想より悲観的に記載しても利益が出るほうが望ましく、希望的観測に基づく計画で売上が確保できず廃業する事業者が後を絶たないためです。

<記入例:事業の見通し>

項目創業当初軌道に乗った後
売上高 ①133.4万円276万円
売上原価(仕入高) ②40万円82.8万円
経費(人件費)10万円50万円
経費(家賃)10万円10万円
経費(支払利息)0.75万円0.75万円
経費(その他)30万円50万円
経費合計 ③50.75万円110.75万円
利益 ①-②-③42.65万円82.45万円

売上高・売上原価・経費の計算根拠(飲食店の例)


  • 創業当初
    • 売上高(土日定休):昼 2,000円 × 20席 × 0.2回転 × 23日 = 18.4万円/夜 5,000円 × 20席 × 0.5回転 × 23日 = 115万円 合計 133.4万円
    • 仕入高:原価率30%(同業他社平均値、出典:○○レポート)133.4万円 × 30% = 40万円
    • 人件費:専従者1人(妻)月10万円
    • 支払利息:500万円 × 年1.8% ÷ 12カ月 = 0.75万円
  • 軌道に乗った後
    • 売上高(土日定休):昼 2,000円 × 20席 × 0.5回転 × 23日 = 46万円/夜 5,000円 × 20席 × 1回転 × 23日 = 230万円 合計 276万円
    • 仕入高:原価率30% × 276万円 = 82.8万円
    • 人件費:専従者1人 + 従業員2名(20万円 × 2名)= 50万円

創業計画書を作成するうえで意識したいこと

どんなに優れた創業計画書を作成しても、申し込む本人が「本当に理解した創業計画書」になっていなければ意味がありません。創業融資を受け事業を軌道に乗せ、借入金を返済するのはあくまで本人だからです。

最初はつたなくてもいいので、まず自分なりに一生懸命計画を立ててみてください。そのうえで不足点や修正点を洗い出し、より良いものに練り上げます。専門家の手を借りてブラッシュアップするのは効果的ですが、その場合でも丸投げせず、最後まで自分ごととして取り組みましょう。

融資審査では担当者との面談で自身の創業計画について説明する場面があります。その際に自信を持って応対できるよう、「腹落ち」するまで理解しておくことが面談突破の最大の武器となります。

まとめ

創業計画書は、創業融資の審査において事業の実現性と返済能力を示す最重要書類です。8つの項目をテンプレートに沿って埋めるだけでなく、各項目に具体的な根拠と数値を入れることが、審査通過の鍵となります。

特に重視されるのは「セールスポイントの具体性」「自己資金の妥当性」「売上見通しの客観的根拠」の3点です。専門家の助言を活用しつつも、計画の主体は申込者本人であることを忘れず、面談で自信を持って説明できるレベルまで理解を深めてから提出しましょう。

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  • 建設業:材料・外注費として1,000万円を獲得。
  • システム開発業:運転資金として 900万円を獲得。
  • コンサルティング業:人件費として 500万円 を獲得。
  • 小売業:商品仕入として1,200万円を獲得。
  • 福祉業:開業資金として1,000万円を獲得。
  • 飲食業:内装工事費として1,400万円を獲得。

出典:創業融資サポート

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よくある質問

創業計画書のテンプレートはどこで入手できますか?

日本政策金融公庫の各支店窓口、または公庫の公式サイトからダウンロードできます。制度融資の場合は都道府県・市町村の商工課や各信用保証協会で入手可能で、業種別のテンプレートも用意されています。

詳しくは「創業計画書のテンプレートはどこで入手できる?」をご覧ください。

自己資金はいくら必要ですか?

公庫の制度改編により、2024年4月以降は一律の自己資金要件は廃止されましたが、創業計画書の信頼性や融資審査において自己資金は引き続き重要視されます。一般に必要資金総額の3分の1〜10分の1程度の自己資金があると、融資判断上有利になる傾向です。

詳しくは「必要な資金と調達方法」をご覧ください。

創業計画書の事業の見通しはどう書きますか?

創業当初と軌道に乗った後の売上高・売上原価・経費・利益を表形式で記載し、それぞれの数値に「席数×単価×回転数×営業日数」のような客観的な算式や、同業他社平均値などの根拠を添えます。希望的観測ではなく、やや悲観的な見積もりが望ましいです。

詳しくは「事業の見通し」をご覧ください。

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